「お邪魔しました。」娘の彼氏が挨拶をする。
僕の表情は今日も頑なだ。
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「パパ、もう切り替えなさい。」嫁が僕に叱咤する。
成人を迎えた娘を彼氏に取られて落ち込むといった心境を僕は持ち合わせていない。恋愛を禁止しているわけでもない。
むしろ、その逆。
娘たちが本気ならば、陰ながら恋の応援だってする。
子供達は子供達で考えて行動する。
子供を授かったときから、そう育てると夫婦で決めてきた。
他の家の人が首を傾げる程にオープンだ。
僕も自分で判断して生きてきたから。
旅行だってお泊りだって「ふーん」で終わる。仕方がないよ。
健康な身体だからね。当たり前の行為に気にもならない。
子は個としての考えが前提としてあるから。
正しいこと。間違っていること。自分なりに教えてきたつもり。
後は、子供達が自分で判断し、親の言っていることが間違いだと思えば、反面教師として捉えて行動してくれればそれでいい。
親は子供を一人の人間として信頼していくだけだから。
娘達は、元気で挨拶ができる人と付き合う。
昔、娘が家に来ても挨拶しない彼氏を連れてきたことがある。
僕は遠慮なく注意をする。
人の家に入るときは、「お邪魔します。」
帰る時は、「お邪魔しました。」
これだけは言うこと。本当に大切なことだからね。
その子は一言「お前の親うざぇなぁ」娘に言った。
娘は「はぁ?あんたうぜぇよ。帰りな。」
瞬殺で別れを告げる…。やれやれだよ。誰に似たのやら..。
そういうこともあって、挨拶する元気な子とばかり付き合うようになった。
娘達は、明るくて、優しくて、本当に良い子を連れてくる。だから、僕もついつい、その気になって仲良くなってしまう。
娘しかいないから..。多分嬉しいんだと思う。
息子がいるような感じがしてね。
出かけることもよくある。
銭湯に行ったり、アウトレットに行ったり、旅行に行ったり、嫁に叱られながら徹夜でゲームをしたり、飲みに行ったり。
いつの間にやら、たくさんの思い出ができたりもする。
『パパさん。ありがとうございました。』
突然に LINE 通知がくる。何のこと?
二人の恋愛が終焉を迎えていた。
付き合っているのは娘達。
二人で決断した結果であり、そこにあるのは男と女の諸事情。
親は温かく見守るしかない。
一緒に遊んだゲームのアカウント…。見れなくなるんだよね。
何とも言えない切ない気持ちになる。
はは…。親も失恋する感じなんだよ。へんなの。
娘が新しい彼を連れてくる。
僕の表情が頑なになる原因。
決して新しい彼が悪いわけではない。
僕がそんなに簡単に浮気ができないだけなんだよ。
心にぽっかりと穴が開いているから。
それが塞がるまでは、表情が引きつってしまうんだよ。
娘の恋愛に一喜一憂する。
父さんは、あと何回苦しめばいいんだろう。
恋多き娘たちに問いかけたい。
やれやれ、愚痴ってしまった。
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